投稿

9月, 2024の投稿を表示しています

与野党イデオロギー闘争の終焉

イメージ
   自民党の新総裁、つまり次期首相に石破茂氏が当選した。その少し前には立憲民主党の新代表に野田佳彦元首相が当選。与野党第一党の党首選が同時期に行われる異例の事態だったが、選出されたトップの顔ぶれも予想外のものだった。  自民党は、民主党政権下で下野して以来15年近く「反左翼」路線を鮮明にしていた。その先頭に立っていたのが暗殺された安倍晋三元首相で、石破氏は安倍一強時代に有力議員でただひとり流れに逆らって安倍氏を批判し、自身の派閥を失うほど冷遇されていた御人だった。  立憲民主党にしても、枝野幸男氏が党を旗揚げして以来のリベラル勢力と、後から合流した野田氏には隔たりがある。実際SNSでは左翼の間での野田叩きが吹き荒れ続けていて「立憲はもう終わった」という声もあるほどだ。ちなみにこの手のリベラルは2018年の自民党総裁選では安倍支配に立ち向かう石破氏を応援していたし、ネトウヨは石破叩きに燃え続けている。  民主党政権から自民党・第二次安倍政権にかけて、与野党第一党はともに思想の左右できっぱり分かれていた。自民党の所属議員はネトウヨ同然の過激な主張を平然とするようになり、立憲民主党は旧民主党以来距離のあった共産党も巻き込んだ民共共闘路線をとってネットのリベラルの熱い支持を受けた。  そうした構造は、今回の2つの党首選によって終止符を打たれたのである。冒頭引用した初の党首討論でも、互いが罵り合ったり会話がすれ違うことなく、フェアプレイな議論が成り立っている様子が印象的であった。「安倍VS枝野」ではこんな光景はありえなかっただろう。夫婦別姓に積極的な石破氏は右翼ではないし、原発容認路線を掲げる野田氏も左翼ではない。党首がそれぞれ中道保守・中道リベラルになったことで、国会で質の高い議論が行われることが期待できる。 国民と距離が広がる「思想の強い人たち」  民主党政権や安倍政権では、下野によってこれらの党を思想の強い人たちが支えていた。2012年の民主党政権末期に「安倍救国内閣」を訴えたのはチャンネル桜などの保守系のデモ隊で、総裁選さなかの自民党本部には大量の右派系市民グループの日の丸デモが集まった。安倍が権力を持つと、今度は「枝野立て」の掛け声もと反安倍リベラルの支えのもと立憲民主党が旗揚げされた。  こうした路上の活動家とSNS上の膨大な政治的なアカウントが連動した...