東京の空は「ムダな国内線大幅削減」で世界ハブ化すべき

 

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 昭和から平成まで長らく、東京の空の玄関は「国内線は羽田空港、国際線は成田空港」というすみわけがあった。ところが民主党政権下の2010年に新滑走路ができた羽田空港を再国際化。新たにつくった国際線ターミナルは就航路線を増やし続け、そこでは間に合わないので既存の第2ターミナルにも国際線が振り分けられるようになり、国際線ターミナルは「第3ターミナル」に名を変えた。


 背景にあるのは国際的なハブ競争の激化だ。東アジア最大の国際空港と言えば近年は韓国の仁川空港の存在が大きい。仁川の規模に東京は勝てない。日本から欧米に行く時に仁川経由で飛ぶことはしょっちゅうである。これは国際的な都市間競争に負け、日本の地位低下につながる由々しき事態だ。


 事実、欧米から東京に向かうにも仁川乗り換えが必要だから、だったらソウルにアジア拠点機能を集約すればいいという発想になり、東京オフィスを撤退させる世界企業は増えている。欧米メディアが日本のニュースをソウルのスタジオから伝える光景も当たり前になった。東京発着の国際線を充実させることは、日本の国益を考えても重要なことなのだ。


 しかしキャパシティには限りがある。これからさらに滑走路を増やすにも用地買収と高額な費用、時間が必要であり、すぐには便数を増やせるものではない。では既存の状態でどうやって全世界の就航都市や便数を増やすかというと、無駄な国内線の大幅削減が必要ではないかと私は強く考えるのだ。

「新幹線で4時間圏」から飛行機全廃を

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 かつては飛行機が対東京で一番手っ取り早い移動手段という地方都市が多く存在した。しかし平成以降、日本全国で新幹線網が整備され続けている。いわゆる「4時間の壁」に収まる範囲で新幹線で行ける都市は多くなっている。

 例えば北陸新幹線沿線では2015年の金沢開業後に富山・小松両空港は羽田便が3割減となったという。いわゆる「金沢ブーム」が起きたのも、それまで飛行機しか移動手段がなかった時代には旅行先として金沢が思い浮かぶことのなかった人が、新幹線で1本で気軽に行くようになったのだ。

 そこで新幹線で4時間以内に行ける場所であれば、飛行機は廃止すべきではないだろうか。実際、東京~仙台・新潟は昭和の東北・上越新幹線開業によって定期便を廃止しているのだから、百万都市の仙台よりもはるかに都市格の小さな北陸に未だに羽田便があるほうがおかしい。平成以降に新幹線でつながった地方都市からは全廃させるべきである。どうしても必要性がある帰省ラッシュの繁忙期や新幹線が寸断された災害発生時だけ臨時便を飛ばせばいい。

 例えば筆者は先日函館旅行に行ったのだが、新函館北斗駅発着の新幹線は1~2時間に一本で、しかもガラガラ状態だった。たいして函館空港には東京便が飛びすぎている。これでは飛行機もガラガラ、新幹線もガラガラでどちらにとっても経営上の都合が悪い。新幹線だけにすれば、飛行機は赤字を減らせ、JRは地方区間の活性化になるのだ。

 事実、ヨーロッパ先進諸国では短距離国内線を規制して高速鉄道への転換させる動きが進んでいる。フランスでは去年5月にTGV(フランスの高速鉄道)で2時間半で移動可能な都市への国内線の運航は法律で禁止となった。向こうの高速鉄道は遅延が多く輸送力にも乏しいが、日本の新幹線は優れた定時性に加え座席数が多く高頻度運行も可能だ。なら4時間圏からは国内線を全廃させるべきである。

日航破綻危機の元凶は地方路線

 ちなみに2010年に日本航空が経営破綻した問題も原因は地方路線にある。国を背負うナショナル・フラッグキャリアであるという特殊性から、日航機は多くの地方路線の東京便を担わされ続けた。政治家の利権で地方航空が作られれば作られるほど、採算性の取れない地方便が増え続け、戦後最大の負債額を抱えて会社が破綻するに至ったのである。


 その日航もわずか2年でV字回復を実現している。そんなに早く再建できたのは簡単な話、無駄な地方路線を切ったからである。つまり航空会社にとって地方路線を荷重に抱え込むことは百害あって一利なしということだ。経営が安定してからは地方便の復活も増え続けているというが、あまり増やしては同じ過ちを繰り返す可能性だってある。ライバルの全日空とてそれは他人ごとではない。


 そういうことを言うと「では地方空港は今後どうやって喰えばいいのか」という声が浮かびそうだが、東京だけが大都市ではない。例えば岩手県の花巻空港の場合、大阪、名古屋、福岡、札幌の定期便がある。そして近年は台湾や中国にも国際線がある。こうした旺盛なインバウンド需要を取り込むために韓国や東南アジアも含めたアジア便を充実させれば良いのである。

グアム旅行さえできない羽田空港

 多くの国際線の飛行機が飛ぶようになったとはいえ、羽田空港は依然として就航都市に欠いている。たとえば全日空はことしストックホルム便を就航させるという。それまで北欧の中心都市であるストックホルムすら直行便がなかったということだ。

 日本人の旅行者も多いような主要なリゾート地ですら羽田便は足りていない。例えば日本から3時間半で行ける「最も近いアメリカ」のグアムだって羽田便はないのである。たとえば神奈川県民の私にとって羽田は近所だが成田空港までは片道2時間かかる。つまりグアムまでは6時間近くの移動になるのだ。それだったら羽田直行便で7時間のホノルル空港に行った方が都合がいい。最近の日本でハワイ旅行が人気な一方、グアムやサイパン方面が低迷しているワケである。バリ島やニューカレドニアも羽田からは直接いけない。

 また日本から一番身近な外国の都市で、韓国第二の都市でもある釜山さえ羽田便はない。成田まで行って逆戻りするのはあまりに遠回りで時間がかかる上に飛行機もそんなに飛んでおらず割高だ。そのため韓国旅行のツアー代金は手前の釜山よりも遠いソウルの方が安価で、韓国人気の若者もソウルばかりに行って釜山に波及しない。台湾にしても台北便はあっても3大都市の高雄や台中に飛ぶ羽田からの飛行機は存在しないのだ。

 こうした需要はあっても飛べない都市が多くあるのは、限りある滑走路を収益性の乏しい国内路線が独占しているからに他ならない。そのために東京と世界のつながりが狭められているのだから、羽田は国内線の代削減が必要なのだ。
 


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