藤沢市分割論
(Wiki)
東海道線の下り列車に乗ると、大船、藤沢、辻堂、茅ケ崎、平塚の順に各駅停車する。このうち大船は鎌倉市で、藤沢はもちろん藤沢市。茅ケ崎駅は茅ケ崎市で、平塚駅は平塚市にある。では辻堂駅はどこか。辻堂市?違う、藤沢市なのである。土地勘のない多くの人は、通り過ぎるだけで辻堂が藤沢の一部だとは気づかない。
無理もない。いずれの駅間も4~5km程度離れていて、同一市内の藤沢・辻堂間も4kmある。途中に引地川という川が流れていて、街が別個に分断されていることは車窓でもわかる。私が上り列車に乗る時は、川を越えると藤沢の市街地が始まりだし、藤沢駅にまもなく到着するのだと感じるものだ。
では辻堂に街がないかというとそういうことはない。駅前には昔から商店街があったし、近年は北口の大規模再開発により大型商業施設やオフィス群・総合病院などが満たされるようになったので、辻堂住民が藤沢駅に出る必要性は相当薄れた。
このような拠点となる街が藤沢市内にはもう1つある。それが市北部の湘南台駅だ。元は小田急江ノ島線だけの小さな駅だったが、1980年代に図書館や体育館・文化センターといった市の文教施設が相次いで作られ、90年代には慶応大のキャンパスや相鉄いずみ野線・横浜市営地下鉄の2路線が乗り入れだし街は急発展。駅周辺は原野だった時代のことなど思い浮かばないような市街地が広がっている。
ちなみに藤沢~湘南台駅間は7kmも離れている。湘南台住民にとっては買い物をするにしても公的機関を利用するにしても湘南台駅前で済むことが多く、半端に遠い藤沢駅にわざわざ行っても大した用事はない。そしてどうせ出るのならば、相鉄か地下鉄で横浜の中心街に行くか、いっそ小田急で新宿に出た方がいいのである。最近は相鉄でも都心に行けるようになっているから「藤沢駅を東海道線に乗り換えるために利用する」機会さえほとんどなくなっている。
これらの街の発展も奏功し、藤沢市は人口44万都市に発展した。いまや市としては横須賀を抜き県内第4都市である。だが市域が広く、これだけ市内の街がばらばらになったものを1つにまとめる必要はあるのだろうかという疑問が同じ湘南の人間としてある。
近隣市・区は便利なコンパクトサイズが当たり前
藤沢市の面積は70km2である。その奥の茅ケ崎市が36km2、北の大和市に至っては27km2と考えるとあまりに大きい。人口は茅ケ崎・大和がいずれも24万人である。藤沢市の面積と人口なら、2つに分けたくらいがちょうどいいのである。
もう1つ藤沢と隣接する横浜市は広大な市域だが、政令指定都市で行政区が分割している。藤沢と隣接する戸塚区は茅ケ崎市ほどの面積に28万人が住む。泉区は大和市よりやや小さいが人口は15万と余裕がある。ちなみに人口第三の相模原市も政令指定都市に昇格した際に、相模原駅、相模大野駅、橋本駅のそれぞれの主要駅に区役所を設置し3つの行政区で分割している。橋本を中心とした相模原市緑区だけ区の面積こそばかでかいが、旧郡部の農山村部を抱えており橋本地区以外に街がないので仕方がなく、人口は17万だという。
私は自治体はその中心となる街を中心に適正な人口規模であることが望ましいと考える。同じ湘南でも茅ケ崎や平塚は、中心街以外に市内に有力な街がないので仕方ないが、藤沢は街が3つもあってそれぞれの街を中心にまとまりが分裂しているのだから、分けた方がよいのではないかと考える。南北で真っ二つに分けるか、あるいは3つの街を軸に市を三分割するのはどうだろうか。
行政はデカければいいものではない。とくにベッドタウン型の自治体の場合、市域が狭い方がより市民生活に近いきめ細やかな公共サービスが充実する傾向にある。千葉県流山市が子育て政策が話題となって人気移住先になっているのもそのためであるし、県内でも海老名市などのコンパクト都市が住みやすいと人口を増やしている。
国レベルでは「平成の大合併」を筆頭に、市を統廃合することばかり推し進められてきたが、人口減少で街というものが成り立ちづらくなった地方の過疎地であれば仕方ないことであっても、首都圏のような場所ではむしろ分割した方がよりよくなるのである。住民主権、地域への分権の推進のためにも藤沢市の分割は現実的に検討するべき価値のあることだ。