3補選で立民完勝 自民にとって「島根1区落選」が一番ヤバい
東京15区、長崎3区では自民党は候補者を立てられなかった。前職が公選法違反事件、裏金事件で辞職しての選挙という圧倒的不利な状況下での不戦勝である。中でも特に重要なのは与野党が一騎打ちの構図になった島根1区での落選劇だ。これはいまの自民党が大ピンチの状況にあることを象徴づける選挙といえる。
政権転落時も揺るがなかった自民党王国が陥落した
しかも今回の選挙は細田博之前衆院議長の死去にともなう「弔い選挙」だった。通常、前任者が亡くなって行われる選挙では後継候補は同情票が集まって有利な選挙戦になりやすい。この現象は自民党系に限らず、3年前に立憲民主党の羽田雄一郎元国土交通大臣(参院長野)が新型コロナウイルス感染で死去した際の補選で弟の次郎氏が当選を果たした例もある。
そして投票率はワーストだったという。こういう時、無党派層は投票所に足を運ばないと組織票を固める自民党がより勝ちやすくなる。かつて森喜朗元首相が無党派層は「寝てくれればいい」と発言してひんしゅくを買ったが、自民党はもともとそういう政党だったのだ。それなのに、ふたを開ければ立憲民主党の圧勝である。
ようは自民党王国で党支持層が離反を起こしているということだ。このままもし6月に岸田首相が解散総選挙を行えば、全国のほかの王国でも同様の事態が起きかねないということを示唆している。
亀井氏はなぜ勝ったのか
これがすべてということではないか。ネトウヨや左翼は、自民党を保守思想の党だと思い込み、その支持者は保守的イデオロギーがあると考えたがるが、実際は違うのである。自分の住む地域により真摯に向き合う政治家・政党を選び、それがたまたま長年自民党だったというだけのことなのだ。選挙期間中、「竹島のある島根県で野党を勝たせるな」と言っていたネトウヨもいたが、選挙民にとって重要なことは領土問題よりも目下自分が住まう地域が過疎化しいること、中央との格差があり、それを是正することなのだ。
無敵状態が当たり前になると、何をやってもやらなくても地元民は支え続けてくれるのだろうと、地域に対する姿勢が軽んじられるようにもなる。竹下元首相は「ふるさと創生事業」で田舎にバラマキを行ったが、中央に大きな影響力を持つ島根選出の大物政治家はここ数年他界が相次いでいる。自民党政府が地域を蔑ろにしているという感覚と、県選出議員には地域政策を期待できないという思いが、「王国民」の投票行動を変化させたともいえる。
似た敗北のパターンは立憲民主党も経験している。3年前の衆院選で小沢一郎衆院議員が初めて落選したことだ。1969年の初当選時から半世紀無敗だった小沢氏が、自民党の30代の若手候補に負けてしまったのだ。
自民党王国があるように民主党王国もある。そうした地域では、旧民主党系の大物政治家が地域の声をすくい上げる役割をしていたが、大物重鎮になればなるほど地域との距離が遠くなるということがある。これはけっして「立民党が左翼だから負けた」ということではない。小沢氏が何党に所属していようが、有権者は小沢氏の地域への取り組みを支持していたし、それができなくなれば厳しい判断を下すということなのではないか。
意外すぎた東京15区での須藤元気氏善戦
東京15区支持政党別出口調査結果 pic.twitter.com/faKYWNRNrz
— よもやま (@kokkai_kengaku) April 28, 2024
須藤氏は元立憲民主党で、山本太郎れいわ新選組代表が応援に入るなど、「右か左か」で言えば左側の人だ。しかし、出口調査では自民党支持層のかなりの割合が、須藤票を入れたということがわかっている。イデオロギーでは理解できないことだ。
それはなぜか?須藤氏が江東区出身で、地域に定着した活動をしていたからんほかならないだろう。東京23区とはいえ、下町であり、コミュニティが活発で土着の人が多い土地だ。やはりいま政治家に重要なことは地域をいかに大事にできるかなのだ。