「北陸新幹線なんていらない」はただのエゴ
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先日、福井県まで延伸開業した北陸新幹線。東京と北陸4県がすべてつながったことに、沿線自治体では大きな喜びが沸き起こったことは東京でも大きく報じられた。しかし、こうしたムードに水を差すかのような声がSNSの一部にはある。それが北陸新幹線不要論だ。デメリットがあまりに大きく、高い税金を使って建設するべきではなかったというものである。
しかしこうした北陸新幹線はいらないという発想は、そのすべてが偏った人たちのエゴでしかない。よく散見される誤った批判を1つ1つ検証したい。
鉄道マニアのエゴイズム
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しかしそうはいっても在来線である限り時間はかかった。東京~金沢間が特急はくたかで4時間だったところ、新幹線では2時間半である。福井までならとても遠かったので最初から選択肢にならず、東海道新幹線で米原から回り込む「しらさぎ」ルートが一般的だったのだ。
日本中の特急を知り尽くした鉄道マニアからすれば、他地方と比べて相当恵まれている特急はくたかなので十分というところなのだろうが、地元民からすればそれでも遅いのは事実だった。どう考えても特急しかなかった時代の移動は不便だったはずだ。
ほかにも鉄道マニアの間で北陸本線が三セクになってしまうことを問題視する風潮がある。ようは青春18きっぷが使えなくなるということだ。「乗り鉄」にとって安い切符で長距離移動できる青春18きっぷは欠かせない手段だが、県ごとの三セクでバラされてしまえば、この切符で北陸に行ったり、北陸を介して関西方面やそれ以遠の長旅をすることができなくなる。
しかし線路がなくなるわけではない。看板が変わるだけである。地元民からすれば電車に乗れるんであれば運行会社がJRだろうが三セクだろうが関係ないし、鈍行に乗るニーズなんて地域輸送に限られている。18きっぷの存在自体知らない人が大半だろう。
ちなみに三セクになるとサービスが低下するという声もあるがそれも間違いだ。県境で会社が変わろうが三セク同士での直通運転はされているし、特急を廃止したおかげで線路容量に空きができたので、普通列車の増発や、特急通過待ちがなくなることによる所要時間の短縮などができるようになった。地域の足が細るというよりはむしろ逆で、旧国鉄やJR時代には北陸とその外部を結ぶことに特化していたものが、これからは地域特化の路線経営ができるようになって便利になるというのが事実である。
鉄道マニアたちはみな北陸圏外(多くはおそらく首都圏)に住んでいて、地元の日常的な交通環境と、遊びに遠出する非日常としての北陸を切り分けてとらえているのだろう。そのため不便さに気づかなかったり、不便も鉄道趣味の楽しみの1つに思えてしまうのである。しかし北陸の人にとっては北陸本線こそが日常のメイン路線である。テーマパークのアトラクションではないのだ。
関西人のエゴイズム
北陸新幹線は要らないわけがない
新幹線は国土全体の移動の軸として整備されるものだ。当たり前だが本当に必要のない新幹線は作られない。四国や山陰に新幹線がないのはそのためだ。北陸新幹線の経路は東京から関西を日本海側から回り込んで結ぶ重要な経路を成している。いわゆる「リダンダンシー」である。
もし東海地震や有事が起きて東海道新幹線が長期間不通になった時、関西と東京を結ぶ重要な迂回ルートとして機能を発揮するのである。現に金沢止まりだったこの数年間でさえ迂回路に使う人が増えて話題になっていた。敦賀まで線路がつながった今後は、より多くの人を救う移動手段としてその価値を発揮するはずである。その必要性があるから、膨大な税金を使ってでもフル規格でここまでつないだのである。
そう考えると、普段北陸と疎遠のわれわれにとっても、この新幹線が重要な存在だとわかるはずだ。不要論は完全に間違っているのだ。