東海道線の湘南軽視は国が動かねば永遠に続く
(Wiki)
首都圏から郊外に延びる主要JR路線の筆頭ともいえる東海道線。日本で最初の鉄道でもあり、東京~平塚間の東京駅1時間通勤圏は膨大な人口が住んでいる。昔から「湘南電車」と呼ばれたように湘南地域のベッドタウンと都心を結ぶ通勤路線としての性質が強い。
しかし肝心の湘南で地域移動には不便なのだ。大船、藤沢、辻堂、茅ケ崎、平塚の湘南5駅はいずれも駅間距離が4~5kmも離れている。徒歩で行き来できる距離ではないし、沿線市民は自宅から駅まで路線バスや自転車での移動を強いられているのである。
私がその異常性に気づいたのは関西に行ったときだ。高槻市に住む知人の家を訪れる際にも新幹線を降りてから東海道線を利用した。驚いたのは関西地区の東海道線が各駅停車と快速線の2路線分並行しいて、細かな停車駅の各駅停車は地域輸送を担い、快速線は京都駅や大阪駅などを目指す際に利用するという使い分けになっていたことだった。
実は関東の東海道線も、東京~横浜は京浜東北線、横浜~大船は横須賀線がぴったり並行し、東海道線が飛ばす地域にも駅がある。だが大船から先は「地域の駅」が不在な区間が続くのである。沿線は住宅密集地で人がいないわけではない。仕方なくバスに乗って駅に行かなきゃならなくなるが、通勤時間のバスは渋滞に引っ掛かることもあるし、朝晩は「開かずの踏切」問題もある。
しかしJRや、神奈川県、あるいは国は、こうした湘南の東海道線沿線の交通格差の是正に何ら大きな取り組みを行ってこない。もちろん藤沢~大船間に村岡新駅を作る動きを藤沢・鎌倉両市が進めるという件はあるが、昭和の時代から続いているのに開業は2032年予定とあまりに遅い。
人口規模や需要を考えればほんとうは最低でも1駅、可能なら2駅は中間駅があってもいい。しかし湘南はベッドタウンである以上、住民人口は多いが都心みたいな大会社がなく自治体に税収に乏しい。村岡新駅1つ作るのにさえここまで時間がかかったことを考えれば、予算も権限も弱い自治体に駅を作らせるには限界がある。茅ケ崎市や平塚市に駅を作れと言っても無理だろう。選挙でも泡沫候補くらいしかそんな話をしていない。
この国はおかしいと思わないだろうか。中央政府は赤字ローカル線の維持を重視したり、九州の田舎にフル規格新幹線を引っ張るようなことばかりをやっている。だが、地方部はただでさえ人口が少なくかつ車社会が基本で、今いる人口も今後も減る地域で、本当に鉄道に税金をかける価値はあるか。首都圏のような人口規模があり現役世代が多く今後も伸びしろがあって鉄道中心の暮らしをしている場所に投資せず、こっちは自治体に丸投げにして問題解決の主体にさえなろうとしないというのは、どうかしているのである。
首都高がや都市部の道路が毎日のように渋滞し、通勤ラッシュで大混雑する。都市から地方に帰省する・都市に戻ってくるのに何十キロの渋滞と大混雑が発生している以上、地方じゃなくて都市のインフラ整備にカネを使うべきと思うのは、私だけじゃ無いと思いますよ。
— イエロー (@yellow3_9) March 30, 2024
X(旧Twitter)にこのポストがあったが、まさに湘南の東海道線の問題はそれである。鎌倉・藤沢・茅ケ崎・平塚の湘南4市で111万人、合併すれば百万都市になる人口規模がある膨大な人口集積地だ。毎朝あの満員ラッシュでみんながみんな東京に出ていて、都心の経済を回しているのはこのようなベッドタウン地域に住んでいる人なのだから、国が都市インフラに金を使うべきだ。ポストをした人物は北海道の人らしいが、的を得た指摘だ。
自治体レベルでやらせれば1駅つくるのに半世紀もかかるが、国策でやればあっという間に建設ができる。それは整備新幹線を考えればわかるはずだ。今世紀に入ってもルート決めにさえ揉めていたような路線が、いつの間にか着工して気づいたら開業しているのだ。まして東海道線の場合、駅前広場とホームの用地を確保する以外にはやることはないのだから、国が動いたら一瞬で駅は作れるのだ。
実は東海道線の湘南区間も関西のような複々線構造になっている。1つが普段使いの旅客線で、もう1つの線路は貨物列車用のもので、朝晩のラッシュ時に通勤特急用が走るための茅ケ崎駅・藤沢駅のホームがあるのだ。ということは、この通勤特急の線路を快速線に転用し、いまある線を各駅停車線にすればそれでいいのだ。
ちなみに昭和の時代までは横須賀線は大船まで東海道線の線路を走っていた。大船以北の横須賀線の線路はもともと東海道線の貨物線だったものを転用したものである。鉄道貨物は戦後ずっと減少の一途をたどっているから、それにあわせて横須賀線の独立化や、湘南新宿ラインなど貨物線の旅客転用が進んできたのだ。村岡新駅ができる場所も潰れた貨物駅の跡地である。であれば湘南の区間もいっそ旅客化すればいいのである。
そして湘南地区に限らず、首都圏にはこうした「軽視された郊外」がいたるところにある。都心一極集中を防ぐためにも郊外の質向上は必要である。大物政治家の選挙地盤がすべて田舎にある自民党や民主党のやってきたような過疎地に無駄なインフラを整備する愚かな政治は辞め、首都圏のアップデートに尽力するべきなのだ。