JRの主要特急は成田空港駅始発にすべき

 

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 先日、私はヨーロッパに行く際に成田エクスプレスを利用したのだが、ガラガラで驚いた。私がいた車両の乗車率は通しても半分程度という感じである。コロナ渦期間中に千葉駅に停車するようになり、千葉駅でドッと降りる客が出てきたのには驚いた。横浜あたりから乗って千葉で降りるビジネス客の比率が高かったようだ。空港に行くために乗車しているのは私以外はみなインバウンドの外国人のみだった。


 成田エクスプレスが不人気な理由は明白だ。都心アクセス路線としてはライバルの京成スカイライナーに太刀打ちできないからだ。スカイライナーは新線経由で速度も速く所要時間がずっと優位なほか、料金も安い。そのため多くの場合日本人はこちらを利用する。ちなみに、成田エクスプレスを選ぶ外国人がそこそこいるのは、ジャパンレールパスという全国のJRに乗り放題の格安切符があるためである。


 それでも私が成田エクスプレスにこだわのは地元からの移動の便が良いからである。湘南に住んでいる私の場合、東海道線に少し乗って戸塚駅まで出て、対面乗り換えで反対ホームから成田エクスプレスに乗り込めばあとは終点までリクライニング席で座ったままである。これが京成スカイライナーの場合、上野まで1時間ばかし普通列車に乗り続け、いったん地上に出て京成の駅舎までスーツケースを転がして移動し、スカイライナーに乗り込む手間がある。大荷物を抱えた移動は面倒であるし、その後の飛行機での長時間フライトを考えるとここで疲れたくはないので、楽な成田エクスプレスがいいのである。


 しかし、あまりに利用率が少ない成田エクスプレスがいつまであるかもわからない。スカイライナーは毎時3本だが、成田エクスプレスは2本しかない。おととしまで大宮行きや八王子行きもあったが新宿行きに短縮されてしまった。この縮小傾向では、戸塚で乗れる大船行きがいつまで残るかもわからない。


 単なる都心アクセスでは京成に勝ち目がないことは目に見えている。そこでJRは空港特急の抜本見直しをするべきではないか。私は主要な特急列車の成田空港始発化をするべきだと強く考えている。

「成田から一本」でインバウンド特需を徹底取り込め

 多くのJRの特急は都心始発で近郊の行楽地に向けて走っている。伊豆をめざす「踊り子」なら東京駅始発、「あずさ」は新宿始発という感じだ。だったらこれを成田空港駅始発に切り替えればいいのではないか。


 最大のメリットはインバウンドである。踊り子に乗れば伊豆の温泉地に行けるし、あずさならインバウンドで大賑わいの白馬に行ける。さらに新宿始発の「日光」なら世界遺産の日光に行けるほか、「富士回遊」では最高峰・富士山にも行けるのである。これらは決して最速の移動手段とはならないが、日本の地理に不慣れな外国人客にとって、成田から1本で観光地に行けることはありがたく、長時間フライトで疲れた体をゆったりしたリクライニング席で休めることもできる。


 また、これは副次的なメリットもある。それは成田エクスプレスが廃止された沿線からの空港アクセス需要を取り込めることだ。八王子で成田空港行きあずさに乗れれば、在来線で新宿に出たり高速バスに切り替えていた八王子市民はその手間をしなくて済むようになる。

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 また近年では外国人観光客が宿泊価格の高騰する都心のホテルを避け、郊外のビジネスホテルを利用することもある。そうした場合にも走行距離が長く、郊外で乗り降りができる特急があった方が大変便利である。


 そして乗車時間が長ければ長いほど、列車内での消費の機会も増える。多くのJR特急は利用率の低下を理由に車内販売を廃止してしまったが、車内で土産物や飲食物を売るようにすれば、ここでも儲かる機会になる。とくに外国人観光客は財布のひもが緩く、円安で何でも買いまくるはずだ。成田延伸を気に食堂車を導入してもいい。いまの成田空港駅は駅弁屋すら廃止してしまったそうであるが、利用者が減り乗車時間が短くなれば購買の機会がなくなるのは当然である。なら、逆を極めるべきなのだ。

なぜ昔の成田延長特急は流行らなかったのか

 こういう指摘をすると「昔は成田から遠方に行く特急があったが失敗した」という指摘をする人がいそうだ。実際過去には成田エクスプレスが富士急行線に乗り入れたり、藤沢、茅ケ崎、平塚停車で小田原駅まで走っていたこともある。しかしこれらはあくまで臨時列車で定期運行のように定着しなかった。


 臨時列車と言うのはよほど大々的に告知をしなければ沿線民にも周知されない。されたところで、期間や曜日を限った列車は乗車ハードルが高い。外国人ならなおさら知る由もない。なのではじめから定期運行でやらなければいけないのである。


 また、バブル期には「ウイング踊り子」という列車もあったが、その終点は成田駅で、ここから空港に行くにはバスに乗り換える手間があった。当時はJR成田空港駅開業前だ。乗り換えハードルのある列車は敬遠されるので、定着せず廃止になったのである。


 そして欠かせない要因として、これらの列車が設定された時代はいまほどインバウンドが活況を呈していなかった。おそらくコロナ渦開け以降の外国人観光客の賑わいは今までで一番ではないか。これほどの特需をモノにできていないJRは損をしているのである。上野までしか線路のない京成と違って、元国鉄であらゆる方面に線路が続いているJRが、主要特急を成田空港始発にしないことは損でしかないのだ。








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