東京の東西分断
丸の内はオフィス街だから行く人も多いですが、そこから東はいかないですね
— 渚のすべて @ (@katsudonking) June 20, 2024
いよいよ火ぶたを切った東京都知事選。3期目を目指す小池百合子都知事と、野党共闘候補で旧・民進党代表の蓮舫氏との事実上の一騎打ちの構図になっているが、一部の蓮舫氏を支持する側から「回る場所が都内の西側に偏重している」という懸念の声が広がっている。
というのも蓮舫氏は16日に町田駅前で大規模な演説会を行いSNSでその様子が拡散されたほか、選挙戦開始前の17日に小金井市の、そして18日には中野区にあるホールを貸切った集会をそれぞれ実施。20日には第一声を中野駅前で、そして新宿駅でも演説をしたほかきょう21日には八王子に向かうという調子で、この数日間ほとんど多摩方面の西側ばかりに足を運んでいるのである。
背景には地盤固めが考えられる。蓮舫氏は目黒区出身で幼稚園から大学前は渋谷の青山学園に通っていた「西側の人」だ。また、石原長期都政以来、東京都内の市区長が保守だらけになった中、西側は世田谷区の保坂区長や、岸本杉並区長、松下前武蔵野市長といった革新系の首長が多く、それらを支持するだけのリベラル系の有権者が大勢いる。
しかし東京都知事は、都内全体のリーダーであるのだから地域の偏重はよくないという批判がある。日本で一番の大都市である東京で、地域の分断構造が浮き彫りになっている。
東西の住人が交わらぬ東京
(Wiki)逆に下町住民は東側の駅に集まりがちで、たとえば足立区の北千住駅は都内で4番目に多い乗客数だという。これはなんと東京駅以上である。首都圏全体や全国から見れば北千住なんてマイナーな下町の地名でしかないが、駅のある足立区は70万人、となりの葛飾、墨田、荒川区で164万人と、川崎市を越える人口規模になる。
縁が薄い地域であるほど解像度が薄くなるものだ。東京西側の人間は足立区自体をゴチャゴチャした下町エリアの1つと言う風に軽視しがちだが、多摩地区最大の八王子市の人口が57万人でそれより多い。ちなみに多摩全体で430万人。一方、江戸川区、江東区に大田区や北区・板橋区なども含めた「下町周辺の区」だけで454万人とその数を凌いでしまう。
リベラルはエリート層に多いが、多摩方面の住宅街にある自宅と「都心のいいとこ」だけを往復する東京人は意外と少ない。むしろ近年では多摩方面は人口減少が始まっており、学生運動上がりの団塊世代をピークとしたエリート層は先細りだ。その一方で人が増えているのは下町で、デフレで若い世代ほどお金がなく治安や住環境はよろしくなくても家賃が安く都心に近い「コスパ」の良さで下町に人が増えている。
蓮舫氏に限らずリベラルはこの東京東側をモノにしなければ絶対に勝利はできないだろう。しかし近年の都知事選では、野党候補は西側偏重の選挙戦に撤するために敗北するという負けパターンが当たり前になっているのだ。
地域偏重を脱したものがすべてを制する
そして、小笠原村 父島 https://t.co/oA4Z6M7kZI pic.twitter.com/ab7ieO44Zk
— 連合艦隊司令官 (@mitasenn6300) June 20, 2024
選挙戦初日、離島部では小池百合子知事の選挙ポスターしか張られていなかったという。泡沫候補はともかく、有力対抗馬の蓮舫氏のポスターがここにないことは致命傷ではないか。東京には神奈川県や静岡県よりも遠くに浮かぶ伊豆諸島や、フェリーで24時間かかる小笠原諸島などの離島があり、そこだって都内だ。
既得権益を味方につけた小池陣営だからこそできたことだともいえる。しかし、離島住民にとっては「蓮舫氏は島のことを理解してくれていないんじゃないか」という不安も出てくるのではないか。繰り返すが都知事は奥多摩の山間部や離島も含めた都内全体のリーダーであり、特定の地域(しかも都心や豊かな人がたくさん暮らす場所)に偏っていると思われれば、票は逃げていく。
リベラルは弱者の味方であり、貧困者の味方のはずだ。であればなおさら小池氏以上に過疎地や下町をきめ細やかに回るべきではないか。