横浜市は川崎市を編入合併して末端区を独立させよ
神奈川県といえば第一都市は県都の横浜市、第二都市は川崎市である。人口は横浜が市としては日本一の377万人、川崎が155万人である。しかし近年は川崎が伸びている一方、横浜市が低迷気味だ。人口も川崎は2019年に神戸市を抜き全国6位に伸びた一方、横浜市は3年前から減少し続けている。
川崎市が伸びている背景に都心に隣接した地の利の良さがある。長らく工業都市で公害問題で住みづらい街であったものの、脱工業化で汚染の問題も気にならなくなりタワーマンションが増えている。また東芝や富士通の本社移転が相次ぎ、川崎駅前はビジネスの街に変わりつつもある。再国際化が進む羽田空港も多摩川を挟んですぐの市内同然の立地だ。
それに対して横浜市は平成後半ごろから栄区などの末端部で人口減少が進みだし、全体が落ち込むようになっている。私はその原因は公共サービスの脆弱さにあると考える。1つの市でありながら人口は川崎の倍以上、静岡県並みという稀な大所帯の自治体である。ちなみに日本の市の人口順位で横浜の後に続く大阪市や名古屋市は都心機能があって自治体を潤す経済基盤があるが、横浜はただのベッドタウン。少ない税収で膨大な市民の面倒を見る必要があるので無理が生じてしまう。「ハマ弁問題」などは典型である。文化会館も各区に揃っていないので成人式は新横浜のアリーナで全市一挙開催となり、末端区民の新成人は参加するだけでも片道1時間くらいかかったりする。
一方で、横浜に隣接する大和市や藤沢市は人口が伸びていて、その先の茅ヶ崎市や海老名市さえも成長している。こうした自治体は都心アクセスは横浜より悪いものの、地元に密接な行政が子育て支援等の様々な施策を取り組んでいるので、ベッドタウンに住みたがるファミリー層は近隣自治体を選ぶようになってしまうのだ。
何より、神奈川県というのは全国でもいびつな構図がある。県内に政令指定都市を横浜、川崎、相模原と3つも抱え、この3市民だけで県人口の半分以上を占めてしまう。これらの市に住む人たちは県民税も市民税も払う必要があるが、政令市には多くの権限が県から降りているので「二重行政」で損をしているのも事実である。
こうした一連の課題を解決するために、私は横浜市は川崎市を編入合併して末端区を独立させるべきだと考える。
横浜市川崎区や戸塚市があった方がいい
横浜駅と川崎駅は10kmも離れておらず、戸塚よりも近い。川崎市は東西に細長い形状をしているが、横断する路線は南武線のみで、内陸部と川崎市街への交流は希薄だ。武蔵小杉あたりに住んでいる人でも、川崎駅に出る機会はほとんどなく、住民票の置き場が川崎氏なだけで「川崎人」という自覚もないはずだ。一方で、JRや京急・東急東横線で横浜駅まで通じていてこの縦軸の移動は盛んなのだから「横浜市中原区」とかにした方がいい。ガラの悪い印象が持たれがちな川崎市民扱いではなくなり横浜ブランドだって手に入るというメリットもある。
新・横浜市としてはグランドデザインが立てやすくなる。東京都心や羽田空港の存在を見据えたより広域的に京浜地区を発展させるための都市計画を豊富な税収の元で作ることができる。川崎駅地区と横浜の街を奪い合う関係ではなくそれぞれ連携して補い合う関係で全体発展を模索するということである。
市営バスも横浜・川崎の市バスを合併させ、豊富なリソースのもと市境をまたいだバスルートの充実など、住民に求められる公共交通として持続可能を模索できる。実際問題、横浜市営地下鉄は新百合ヶ丘駅まで延伸工事を予定しているが、新百合ヶ丘は川崎市内である。公営地下鉄が域外に伸びることは受益と受苦の関係がアンバランスになるのでそこも横浜市内にしてしまった方がよいはずだ。
対して区から独立する各市は、地元で集めた税金が域外の大掛かりな開発に使われることなく、地元の住民のために使うことができる。例えばコロナ渦でその必要性を多くの人が認識した保健所は、人口20万人以上であれば設置できる。県内では24万都市の茅ケ崎市が2017年に保健所の開設を実現しているが、戸塚はこれより多い人口28万人であるにもかかわらず自前の保健所がないのである。こうした単独の市と比べた行政格差を是正するには横浜からの独立しかないのである。
何も知らない人が東海道線の下り列車に乗れば、多摩川を渡って川崎市に入ったことは自覚しても、街並みに切れ目がないまま気づけば横浜駅に着いてしまう。一方横浜を出ると丘陵のトンネルを挟んで次の戸塚にやって来るので、藤沢駅=藤沢市、茅ケ崎駅=茅ケ崎市の感覚で「戸塚市」が存在していると思い込んでいる人も大勢いるのだ。