靖国神社は宗教である

 

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 靖国神社の石柱が落書きされた問題がネトウヨの間で大きな関心事になっているそうだ。犯人はいわゆる中国版迷惑系Youtubeで、それに対して「中国版ネトウヨ」たちが礼賛している。


 しかしながら中国のネット上では落書きの動画は拡散されるたびに削除されており、事件を受けて中国当局側は不適切な行動を控えるよう呼び掛けている。中国は軍国主義の象徴である靖国神社を良く思っていないが、迷惑系の低俗な行為までは庇いきれないということだ。


 ところでこの間、ネトウヨたちの間で不思議な言説が蔓延している。ネトウヨは「靖国神社は宗教ではない」というのだ。なぜかお仲間のはずの産経新聞記者が「宗教施設に対する冒涜行為である」と会見で自説を展開したところ、それがネトウヨの間で叩かれているのだ。

靖国神社は宗教法人である

 ネトウヨの間では、靖国神社は戦没者を追悼する国家施設であって宗教ではないと本気で考えられているが、これは間違いだ。


 まず靖国神社は一宗教法人である。つまりお寺や教会、創価学会などの新興宗教と同じ世の中にたくさんある新旧宗教団体の1つにすぎないのであって公的機関ではない。国が管理する無宗教の戦没者の墓地としては千鳥ヶ淵戦没者墓苑という施設がある。一方靖国神社は戦没者を「神」とみなし、それを祀り上げる宗教であって、千鳥ヶ淵と性質は大きく異なる。ちなみにネトウヨがよく「アーリントンはよくてなぜ靖国参拝はいけないのか」というが、アメリカのアーリントン国立墓地は千鳥ヶ淵同様無宗教の施設だ。


 日本は信教の自由が認められた文明国である。日本人の中にはキリスト教徒もいれば創価学会員もいて、彼らは神道を信じておらず鳥居もくぐれない。徴兵された戦没者にもクリスチャンはいるわけで、勝手に神道の神様扱いされるということは亡くなった本人も遺族も許容できるものではないわけである。天皇も千鳥ヶ淵には行っているが靖国参拝はしない。政治的偏りがあるからだ。

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 ちなみに神道自体は神話の時代から存在するが、靖国神社の歴史は浅い。明治時代に戊辰戦争の官軍側の「軍神」を祀る東京招魂社として始まったのが起源である。ちなみに天理教は江戸時代末期に始まっているから、靖国は天理教より新しい「新興宗教」なのである。


 ネトウヨの間では靖国神社を既成事実として国教化すべきと考える人がいて、与党の靖国参拝政治家を礼賛し、宗教ではなく公的機関であるという言説をふりまく人もいるが、単純に考えてほしい。天理教や創価学会やエホバの証人といった新興宗教がもし国教化して、信者以外の多くの国民が許容できるだろうか?それも靖国問題があれる一つのポイントでもある。


 そして靖国はあくまで官軍側の施設であるから、朝敵扱いとされた東北地方の幕府軍や、西南の役の西郷隆盛は同じ日本人の元軍人であっても合祀されていない。神様の反対側の敵であるからだ。かたや、先の大戦に徴兵された朝鮮・台湾人などの植民地出身者は勝手に英霊扱いされているので、これもアジアの遺族から批判を浴びる要因である。

靖国問題の解決方法

 戦後80年近く、そろそろ靖国問題をきっぱり解決するべきではないか。なんでも玉虫色でうやむやにする日本人的立場をとるからアジアとはいつまでも揉め続けるし、日本の右翼政治家やネトウヨも跋扈するのである。


 日本政府がすべきことは、千鳥ヶ淵が扱わない戦没者慰霊施設の設置である。千鳥ヶ淵はあくまで遺骨を納めた墓地であり、骨も見つからずに戦地で亡くなった軍人たちの慰霊の場ではない。私の祖父の兄は南方で戦死したが、墓もない以上、当靖国神社を参拝するしかその追悼の場はない。


 彼らをも無謀な死に追いやった当時の戦争指導者(A級戦犯)を排除した上で無宗教の慰霊施設を作れば、天皇も、左翼も、アジアの人々もそこに行くことができる。靖国はあくまで国家神道という信仰宗教を信じてやまない右翼思想を持つ宗教人だけの聖地としてやっていればいいのだ。













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