「東京ディズニー大混雑」は新テーマパークの大チャンス
いやこの絵はツラすぎるだろ。。。
— (D)だみ (@staff0226) June 7, 2024
一般ファミリー層が始発より前に来るなんて無理だし、パス拾いも勝てるわけがない。。 pic.twitter.com/oVzwVrPwGf
東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」をめぐりファンの間で論議が起きている。新エリアは入場制限がなされており、別途の優先券や課金が必要だという。
この光景に長年ディズニー好きだったファンたちは不満を爆発させている。最近の東京ディズニーリゾートは予約制や別途課金といった仕組みが増えすぎていて一般層が楽しめないというのである。以前は何も考えずに当日の思い付きでふらっと来園し、いくつかアトラクションを楽しんで食事や買い物をするということができたが、いまは入園も予約制で、グッズの購入やイベントなども細かいシステムがあったりし、「高度な知識があって金銭的余裕のある人」でなければぞんぶんには楽しめなくなっている。その極めつけが今回の「ツラすぎる絵」だということだ。
しかし別のファンたちからはパーク側を庇う声もある。SNSでみなが口をそろえているのは「この10年くらいでディズニーが異様に混雑するようになった」ということだ。つまりあまりにも客が増えすぎたので、制限や課金などをしなければ対応しきれないということである。新エリアを作ったのも園内の客を分散させるためといえるし、そこに膨大な人一点集中すればアトラクションはパンクしてしまい、テーマパークなのに風情も楽しめないだろう。課金が必要なのも無理はないのである。
もちろん今の混雑についてはコロナ渦を開けてのリベンジ消費とか、円安の影響で海外旅行ができなくなった人たちが非日常体験を求めに来ているとか、インバウンドの増加などといった昨今特有の事情もあるが、コロナに入る前から「最近のディズニーは混みすぎている」と言う声はよく耳にした。ちょうど10年前の2014年をピークに顧客満足度が下がり続けているというデータもある。パスポート料金の値上げラッシュが始まった年である。
以来、客は増えるが混雑で満足度が下がり、混雑をなくすために課金や制限を設ければそれも不評を買う負のスパイラルが起きているのであるが、これには社会状況が大きく変わったことが理由に挙げられるだろう。
日本人全体のテーマパークに発展したディズニー
層が広がったのは世代だけではない。平成以降、首都圏一極集中が進んで国民の3分の1が00万人以上がディズニー日帰り圏に居住するようになっている。加えて近年では新幹線の整備が進んだり安価な高速バス・LCCが台頭することで、地方の遠方に居住しても気軽にディズニーに行けるようになった。泊まりが必要でもディズニー周辺には格安ホテルだってある。これにより、いままでならたとえ行きたくても人生で1回行くか行かないかだった人が年に1度、あるいは複数回来園できるようになっている。かつては地方にも遊園地くらいはあったが、みんなディズニーが潰してしまった。
さらに東京の若者にとって、日常離れして遊べる場所が減っているのも事実ではないか。かつては若者の遊び場と言えば東京の街中だった。平成時代なら渋谷は世間ずれしたファッションの若者が闊歩する流行の発信地だったし、銀座はよそ行きの晴れ着を着て行く高級な街だった。ところがどこもみんなデフレにより全国チェーンの集まるただの繁華街になり、自分の住む最寄りの駅前と変わらない日常空間になってしまった。一方、若者たちはアニメやゲームといったコンテンツの影響から日常離れした娯楽を好むようにもなり、非日常体験空間を求めるニーズも高まっているということが考えられる。人気作品をコンセプトにした手の込んだ「コラボカフェ」が作られるようになったのもテーマパーク的なニーズの高まりといえる。
こうした社会状況の変化が、10年間のディズニーの異様な混雑を招いていると考えれば、それはテーマパークのチャンスでもあるのではないか。バブル期の日本ではテーマパークや凝った世界観の大型レジャー施設がたくさん作られたが、平成不況でディズニー以外はみんな潰れてしまった。しかし社会構造が変わったことで、2度目のテーマパークブームが起きる可能性があると考えている。
東京ではテーマパーク化の再生ラッシュが起きている
また西武園ゆうえんちでは、としまえんと同様旧態依然の遊園地であることが飽きられていたものの、テーマパーク再生人の森岡毅氏のもと古さを逆手にとって昭和時代をテーマにしたレトロスポットに再建し、評判になっている。森岡氏はさらにお台場の老朽化したショッピングモールを没入体験に特化したイマーシブ・フォート東京として再生し、これも人々SNSでバズっている。
2019年にできたムーミンバレーパークもレジャー施設を「ムーミン」のテーマパークに特化したものである。さらにテーマパークとはジャンルが異なるが、個人的には南町田グランベリーパークにあるスヌーピーミュージアムも、ハリポタと同様に特定の作品世界に没頭したいという欲求を持つ消費者に特化した展示施設といえる。私もスニーピー愛好家の友人と来館したが大満足だった。ここも元はどこにでもあるアウトレットモールだった。
このように、もとはただのどこにでもある遊園地、レジャー施設、商業施設で埋没していたものが、特定のテーマ性を持たせた空間になることで幅広い客を集める例が増えている。私はディズニーで収容しきれないテーマパーク需要が各地に分散しているのではないかと考えている。
今ならディズニー級の外資パークも成り立つのではないか
外資系大規模テーマパークの進出話は過去にもあった。パラマウントは過去に日本に進出させようとして断念したことがある。また韓国のロッテワールドが江戸川区に来るという話もあったが、近場にディズニーシーが開園したことで断念。市場は飽和しており、ディズニー以上に首都圏にもうテーマパークはできないと考えられた。
しかし、ディズニーが2つもパークを運営してもまだ混雑しているのなら、もう1つくらい首都圏にあっても成り立つのではないかと私は思う。横浜のしかるべき当局者は今からでもアメリカに飛んで外資系誘致の積極的な交渉をするべきではないだろうか。
いまイギリスでは2025年オープンを目指して建設されているロンドン・リゾートというパラマウント映画とBBCのテーマパークがあるが、あれをそのまま横浜にもって来ればよいのではないか。同じイギリス発のハリポタがここまでウケているのなら、イギリス要素があったっていい。しかも横浜といえばかつてみなとみらいにBBCの映像体験施設「オービィ」があって好評だったのだから、流行らないはずがないのである。
大阪のユニバーサルスタジオが今まで続けられているのは、韓国や中国などの近隣アジアからも最寄りのユニバーサル映画を楽しむテーマパークとして定着しているのであって、そうしたインバウンド需要も取り込めば大成功は間違いないはずだ。