踊り子は湘南停車の列車を作るべき
(Wiki)
東京と伊豆半島を結ぶ特急「踊り子」は大船を出ると小田原まで東海道線をノンストップで運転している。間に挟んだ湘南地域は完全スルーだ。筆者は湘南に生まれ育った人間なので子どもの頃から地元を素通りする踊り子を見るたびに疑問に思っていた。
調べたところ理由は遠近分離のようである。かつての踊り子は藤沢、茅ケ崎、平塚に停車する列車も設定されていたが、停車駅が快速並みに多くて速達性に乏しかった。そこで東海道線では1989年に普通列車の二階建てグリーン車や快速「アクティー」を導入し、湘南方面から早く移動したい客やリクライニング席で快適に過ごしたいい客はこちらに乗せるようになり、湘南地域は全駅通過扱いになってしまったという。
だが果たして今のままでいいのかという疑問がある。大船を出れば田舎同然の沿線環境だった昭和の時代と比べると、湘南はベッドタウンとして目覚ましく発展を遂げた。藤沢市は44万人、茅ケ崎市は25万人、平塚市は26万人都市と、地方県なら県庁所在地レベルの人口を擁している。ちなみに特急が通過していた1989年なら藤沢は35万人、茅ケ崎市は20万にやっと届いたくらいだったから特急を飛ばしても仕方がないのも確かだったが、当時と今では状況が大きく違うのである。
そして人口が増えたのは内陸側の県央地域も同じである。藤沢駅からは小田急江ノ島線が、茅ケ崎駅からは相模線が県央方面を結んでおり、これらの駅は県央の膨大な後背人口を抱えていることになる。ちなみに東海道線のライバルの小田急の特急「ロマンスカー」は藤沢はもちろん、相模線を介して茅ケ崎と接続する県央の海老名にも2016年から停車するようになった。海老名は人口14万都市だが、小田急とJR・相鉄の乗り換えターミナルとして有力な駅である。
これは湘南出身者の地域エゴではない。沿線環境が変わっているのだから、停車駅を変えるべきではないかと強く考える。
実は東京直通の意味がない踊り子
修善寺踊り子は、東京〜横浜でぼちぼち乗車→小田原〜湯河原でぼちぼち下車→熱海で更に下車→三島で満席に→伊豆長岡で半減、あとは修善寺まで、という乗客の流れだった。ほとんど東京直通の意味が無い。
— yanagi1 (@yanagi1) May 26, 2014
なぜか。それは東海道新幹線があるからだ。単に速さを優先するなら、東京、品川、新横浜から新幹線に乗り、小田原、熱海、三島で降りて乗り換えればいいのである。三島で乗客が一気に増える理由も同じであるし、伊東線経由の伊豆急下田方面行きも熱海までは新幹線でやってきて乗り換えた方がいいのである。ちなみに熱海~三島間はJR東海の管轄になっているが、東海道新幹線もJR東海の管轄だから、JR東海からすれば顧客には新幹線だけ乗ってくれた方がいいので、利益を奪うだけの踊り子を走らせる意味はほぼない。
だからこそ私は踊り子は湘南停車に戻すべきだと考えてもいる。新幹線の停車駅は新横浜を出ると小田原まで存在しない。「湘南新駅構想」は長年さけばれているが、実現する気配がほとんどない。それでも湘南各地から熱海くらいなら普通列車でも1時間程度なので構わないが、修善寺や伊豆急下田まで行きたい場合、特急で1本の方が断然いいのは間違いない。
大量の湘南ナンバーが殺到する伊豆界隈
(Wiki)筆者は去年、熱海旅行に行ってきたのだが、その際に驚いたのが湘南ナンバーの行楽客の多さである。伊豆方面は平地に乏しく、広い幹線道路がほとんどない。よって休日は静岡県外から来るクルマでそこら中が大渋滞になってしまうのだが、その車のナンバーがどれもこれも見慣れた湘南ナンバーだらけなのである。
私はこれが「踊り子が取りこぼしまくっている顧客」だと強く考える。湘南の人間として感覚がよくわかるが、伊豆に遊びに行くのに新幹線もなく、電車を途中で乗り換えても時間短縮にはならず面倒というと、マイカー利用が真っ先に選択肢に浮上する。海沿いの134号線を介して高架から相模湾を見下ろす西湘バイパスを抜けていくのがドライブコースには抜群だ。車窓もよく運転が疲れるほどの距離ではない。
これは県央部も同じである。とくに2010年代の圏央道開通以降は、海老名市内からでもそのまま小田原厚木道路を介して熱海方面に行けるようになった。今や目的地が修善寺であれば、沼津まで東名を走って伊豆縦貫道路に接続することで高速だけで着くこともできる。
踊り子が神奈川県のベッドタウン地帯を完全無視した一方で、人口へ増え続け、高速道路事情は年々よくなっていると、普段は電車利用が中心の首都圏住民であってもクルマ依存度が高まってしまうのは当然のことではないか。しかし伊豆は道路も駐車場も広げようのない場所だらけなので、慢性的な混雑が起きてしまう。
これは決して好ましい状態ではない。休日ともなれば地元住民は生活移動もままならず、何かあった時も緊急車両の到達が遅れてしまいかねない。もちろん排ガスまみれで地球環境にも悪い。伊豆の人たちにとっても大変迷惑であるから、特急を設定して伊豆から湘南ナンバーを減らす必要がある。
横浜始発の湘南踊り子が必要
(Wiki)そこで私は、横浜駅を始発とした踊り子を作るべきだと考える。停車駅は通勤特急「湘南」の主な列車に準じて、大船、藤沢、茅ケ崎、平塚あたりでいいだろう。そうすることで、湘南地域の人たちが伊豆まで旅行できるメリットを最大限発揮させるべきである。
一方で、より特急利用を促進させるためにすべきことがある。まずは湘南新宿ラインの特別快速を小田原止まりから平塚止まりに短縮することだ。特別快速の横浜~小田原間の利用が、踊り子と被ってしまうので、利用者の特急誘導をする必要がある。通勤快速を廃止して特急「湘南」に切り替えたやり方と一緒だ。
また、東京始発の踊り子は大船通過にすることで、湘南踊り子の利用率をさらに高めつつ、新幹線に流れがちだった東京~横浜の利用者にスピードアップのメリットを与え、それぞれの列車が賑わうようにするべきでもあるのだ。そして湘南踊り子は湘南からなら普通列車で十分な湯河原を通過扱いにし、こちらも出発地と目的地のそれぞれの受容にあった停車駅に切り替えるとよいのである。