直通列車は東京の街を殺すのか
(Wiki)
2015年の「上野東京ライン」開業以降、湘南在住の筆者はたびたび東海道線に乗って上野に友人に会いに行くようになった。行くたびに思うのは駅設備のちぐはぐさだ。中央改札に降りてくると、ずらりと並ぶ地平ホームはがらんとしている。頭上に立派な壁画のあるコンコースは、改札機が半分近く潰されて窓口に改築されたため、眺めがよくなくなってしまった。
全ては直通が原因である。上野東京ライン以前であれば、東北本線・高崎線・常磐線は上野駅が始発・終着で、大量の列車が地平ホームを埋め尽くしていた。昭和の新幹線開業前であれば、東北・北陸方面への特急はみんな上野始発だったので、膨大な改札口が繁盛していた。上野でせき止められ、排出される人たちがいなくなったので、改札もホームも過剰になったのである。
今上野駅前に行くと、外国人観光客に絡む商売は賑わっているが、地元の商業施設はパットしていないことに気づく。長年やっていた商業施設は閉店し、ヨドバシカメラもドラックストアも免税品のようなインバウンド需要でにぎわっている。ターミナルの街として人が集まらなくなったかわりに、アメ横を楽しみに来た外国からの旅行者で経済が回っている状態なのだ。
一方で「南の上野」のようなポジションの品川駅は賑わっている。筆者が子どもの頃は乗り換え以外に機能がなかった印象があったが、近ごろは周辺再開発も進んでいる。上野東京ラインの結果、常磐線は品川が始発駅になった。新幹線は長らく素通りしていたが2003年に品川駅ホームが誕生し、その後「のぞみ」を含めて全列車停車するようになった。通過列車も多い上野駅新幹線ホームとは対照的である。
東京一極集中と言われて久しい。しかし東京であればすべてが盛り上がっているかというと違う。実際には都内でも直通によって恩恵が生じる地域ばかりが人が増え開発が盛んになるなど突出し、素通りされる場所は没落しているのである。
渋谷がダメになった理由は東横線地下化か
この直通ホームが地下深くにあるため、地上の街との行き来が不便になった。結果、渋谷そのものが若者離れが起きたという話である。確かに最近の渋谷は、外国人観光客かビジネスマンばかり見かけるようになっている。昔のような見渡す限り若者しかいない状態ではない。デパートに行きたければ、渋谷の半端な百貨店よりも、直通先の新宿三丁目駅の伊勢丹本店に行けばいい。百貨店不況が叫ばれる昨今でも、直通で来店が便利になった伊勢丹本店は絶好調の売り上げを誇っている。
東横・副都心線沿線は渋谷の代官山も直通のせいで空洞化しているともいうし、明暗が分かれている。一方で独特の存在感を示しているのは池袋だ。主要な大型店の閉店など、もともとあるターミナル街としては空洞化しているものの、腐女子カルチャーの聖地としてマニアックな若者向けの店が賑わうようになった。サンシャインシティ周辺のテナントの入れ替わりが分かりやすいだろう。かつては埼玉方面の私鉄沿線在住者を集積する大きな街として機能を果たしたが、関東一円からそのような趣味を持つ女性層を一点集中させるようになったといえる。筆者の地元の湘南からは湘南新宿ラインを使っても一本で行けるようになった。
(Wiki)2015年の「上野東京ライン」開業以降、湘南在住の筆者はたびたび東海道線に乗って上野に友人に会いに行くようになった。行くたびに思うのは駅設備のちぐはぐさだ。中央改札に降りてくると、ずらりと並ぶ地平ホームはがらんとしている。頭上に立派な壁画のあるコンコースは、改札機が半分近く潰されて窓口に改築されたため、眺めがよくなくなってしまった。
汐留と大崎の明暗
筆者は子どもの頃にお台場に行くには新橋駅でゆりかもめに乗ってレインボーブリッジを渡った記憶があるが、それは地図で見ると遠回りだ。いまは湘南新宿ラインで大崎駅に出てりんかい線で乗り換えるようになって久しい。大崎はりんかい線も湘南新宿ラインもない頃は、ただの山手線の停車駅にすぎなかったが、ソニーが立派なビルを建てて再開発で一大ターミナルになっているし特急も停まるようになった。すぐそばの品川駅と栄え方がよく似ている。
(Wiki)このように見ていくと、直通が便利で活動してもそこで乗り換える必要のある駅の伸びと、ほかで変えられない独自の価値がある場所が活性化している。ちなみに大崎から相鉄が直通する終点の海老名駅は、平成時代まで田んぼが広がった駅前が大型ショッピングモール群に切り替わった。ただ大型店や全国チェーンがあるだけの半端な規模の繁華街は、こうした地元の郊外モールにも役割が代替されてしまう。差別化をどう図るかが重要なのだ。