日本は「大きな国」ではない
日欧の大きさ比較が話題になっていますが、そのほとんどが「西ヨーロッパ地域だけ」と比較して日本をあたかもヨーロッパと同じくらいの長さ・大きさと見せる画像。ヨーロッパ大陸全体と比較すると、実際には長いは長いですが、特別大きいというほとでもないことが分かります。 pic.twitter.com/1T3A47bZyB
— ゆづき@西洋紋章学研究家 (@6meikan_herald) October 13, 2023
よくネトウヨの間で「日本は大きな国である」という自画自賛のネタが盛んに語られ、その引き合いにヨーロッパに当てはめた図が用いられる。しかしそれはあくまで西欧との比較であり、実際には誤りだということがツイートで指摘されている。
このような見間違いが起きるのは日本が島国だからだ。北海道から沖縄まで島々が続いていて、それらを直線で結ぶと非常に長く見える。しかし実際は間に海があるので、地続きの大陸国と比べると大したことはなくなってしまう。
また本州が細長いことも無視できない。太平洋側の仙台港から日本海に面する山形の酒田港までは直線距離で約120km程度しかない。ドイツ東部の首都ベルリンから旧西ドイツの首都だったボンまでが470kmだと考えるとものすごく幅が狭いのだ。ドイツの国土は日本よりもやや狭いが、大陸国でほとんどが地続きでタテヨコまんべんなく国土が広がるドイツと、島がいくつも点在する日本では、体感の広さは変わるのである。
ヨーロッパの中で大きな国でもない日本
日本を面積そのままで四角く成形してヨーロッパに重ねてみた pic.twitter.com/5k9OdtNyLQ
— きつねいろ🍊 (@kinokuni_fox) December 5, 2022
日本の面積を真四角にした人がいたので引用するとわかりやすい。こうしてみるとフランスやスペインよりも小さいことが一目でわかる。フランスは551,500km2で378,000km2しかない日本に比べるとかなり大きい。ちなみにロシアとの戦争で「東欧の小国」のイメージのあるウクライナも国土面積は603,500km2で世界44位、日本は61位であるから、ヨーロッパ諸国と比べても、また世界全体で見ても大きな国ではない。
このように考えると「日本は大きな国である」という主張がいかに現実を無視した間違いであるかがよく分かるはずだ。ましてアメリカ、カナダ、ブラジル、中国、ロシアなどと比べれば一目瞭然の小ささである。アメリカには日本国を呑み込むほどの州だっていくつもある。
しかしなぜそんな間違いがまかり通るかというと、そこには大国コンプレックスがある。冒頭に比較対象となった西ヨーロッパ諸国は、いわゆるG7などの「主要先進国」と一致する。そして戦前においても列強として全世界を征服する勢いのあった国々だ。
日本の面積をヨーロッパと比較したがる人達は、そうした「大国」と比べて日本が負けず劣らないレベルがあるのだと思い込みたくて仕方ないということである。なので、それらの国の旧植民地であったり、先進国とレベルの差が激しい発展途上国であるブラジルやロシアなんかは太刀打ちできない国土の差があってもどうでもよく認識でき、ヨーロッパにばかり目が向いてしまう。
ちなみにこのような日本は「大きな国」であるというネタがネトウヨの間でさけばれるようになったのは国の面積比較アプリが話題になった過去10年くらいのことだ。この10年間とは、日本の経済力が下落し続けた年間でもあり、実際にG7加盟国として国土面積では日本に次ぐドイツにGDPでは抜かれてしまっている。
ようはアメリカに次ぐ先進国第2の経済大国であるという拠り所が崩壊しかかっていたため、面積では勝っているんだぞとアピールしたがるようになったというだけなのである。しかしどのみち日本の面積はフランスなどにはかなわないし、「面積が狭く人口も少ないドイツにGDPで抜かれた」という事実が重くのしかかるのである。
国力と面積は一致しない
(Wiki)繰り返すが、面積が大きいことは国力の体現ではない。ロシアやブラジルなどは幾ら国土が広くても発展途上国である。一方で、小さくても経済大国をやっている国は幾らでもある。シンガポールが典型だ。面積はわずか720km2で、東京23区よりやや大きいレベルしかない。世界189位とドベに近い国だ。
だが周知のように一人当たりGDPで世界5位、アジア首位の座に君臨している。バブル期であれば東京にアジア支社を構えた欧米外資系企業の多くが今はシンガポールに拠点を移して久しく、東京を凌ぐ国際経済都市国家として世界の中で存在を示している。
一人当たりGDPの世界順位を見ればわかるが首位のルクセンブルグ、2位のアイルランドにせよ国土が狭いからこそ統治コストを下げることができるのである。その点日本は中途半端に国土が散漫に広がっているので、東京に集中させても過疎地のインフラ整備などに税金が削がれ、国家リソースをさらなる東京発展や東京の抱える課題解決に特化しづらく、シンガポールに競争力で負けてしまうのである。
対して広くない日本が「国土の広さ」を拠り所にするのはありもしない歴史の古さアピール同様何も生産性のない愚かな行為である。そんなくだらないことをしている暇があったら、日本の抱える問題に立ち向かい、日本を抜いたシンガポールとどう国家観・都市間競争するかを考えた方がいいのだ